みなさま、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくおねがいします。
今年の1冊目ですが、こちらです。
本書のさらっと紹介
本書は、英語教育の研究者である鳥飼玖美子、伝説の国語教師 大村はま 教え子である刈谷夏子、オックスフォード大の社会学者である刈谷剛彦が、国語教育と英語教育についてお互いの考えを述べあった本である。
少し変わっているのは、対談をまとめたものではなく、まず誰かが原稿を書き、そしてそれを読んでは自分の考えを書く、という書き言葉でのやりとりをして本書はまとめている。
新書なのでさくっと読めます。新年の1冊目に読まれてはいかがでしょうか?
本書の目次です
第1部 大村はまの教育
第1章 「国語力は大丈夫か」
第2章 母語と国語、外国語と英語
第3章 いきいきとした教室へ
第2部 理論と実践、演繹と帰納
第4章 理論とは何か
第5章 演繹的思考と帰納的思考
第6章 英語と国語の連携
第3部 ことばの教育の未来
第7章 言語能力を鍛えるために
第8章 これからの言語教育へ向けて
第9章 大学入試改革を考える
第10章 徹底的に読み、書き、考えるーことばの力の鍛え方
本書の感想
そもそも、大村はまを知らない人はこの本を手に取るのかといった問題はある。本書は大村はまのすごさが書かれているのはこの本の中では一部であり、気になった人はほかの大村はまの本を読んでほしいなあと思う。本の中でも紹介されている大村はまの教育哲学を表している一節がある。
「ことばを育てることは、こころを育てること、人を育てること、教育そのものである」
「英語教育は英語を教育するのではなく、英語で教育するのだ」と、大学のときの恩師にいわれて衝撃をうけたが、その時のことを思い出す。
すとんと腑に落ちるようにわかるとはどういう感じか。わからないとはどういう状態か。「わからない」が「わかる」になる時のよい助けは?・・・(中略)そういうことを、子どもの頃から熱心な勉強家だった大村は、まず我がこととして実感をもって掴んでいました。その実感を教師としての核としたわけです。
授業を考える際、「なにをやるか」、「なにを教えるか」を私は考えがちである。一方、上記のような考えは、生徒目線もしくは、生徒の頭の中を覗く神のような視点である。
教室の中でのカギ括弧付きの「勉強」でなく、人が現実の要請の中でものを考えようとする、知ろうとする、伝えようとする、その実践的なあり方のまま勉強する方法ーそれが「実の場」での学習です。「ごっこ」ではない、ということです。
現実に即した教材(オーセンティック)、課題解決学習など、今ではあたりまえとなった概念だが、これらをやさしい言葉で言い換えられている気がして、「ああ、あれのことか」と理解が深まる感じ。
本書のまとめ
「対談形式」のため、とっつきやすく、大村はまを知らない人でもその魅力がわかる1冊。英語科の先生、国語科の先生どちらにも読み応えがあるのでは?と思います。新しい教育方法とかそういう目新しいものはありませんが、教育観というか、教育に関する信条なんかをアップデートするにはよい本かもしれません。