エレファントの英語教育実践道

私の英語教育と,これからの英語教育について。

「このテストはどんな力を測っていると思う?」2021年度 大学入学共通テスト英語リーディング(第1日程)第2問Bのレビュー

皆さんは、共通テストの英語の問題どう思いましたか?

 

私の結論を先にいうと、「共通テストはとにかく色んな意味ですごい」です。

 

で、今回は、一部の問題を取り上げて、皆さんが「そういうことだったのか」と

 

なるように頑張って解説していきます。ちなみに前回の解説記事はこちら。

 

 

 

1. これからの英語教育に、多様な英語とICT導入は必須という話。

問題文冒頭はこのようになっています。

You've heard about a change in school policy at the school in the UK where you are now studying as an exchange student. You are reading the discussions about the policy in an online forum.

 

 続けて、とある生徒が校長先生にネット掲示板に書き込みしています。

From: K. Roberts 

Dear Dr Berger, 

On behalf of all students, welcome to St Mark's School. We heard that you are the first Head Teacher with a business background, so we hope your experience will help our school. 

I would like to express one concern about the change you are proposing to the after-school activity schedule. I realise that saving energy is important and from now it will be getting darker earlier. Is this why you have made the schedule an hour and a half shorter? Students at St Mark's School take both their studies and their after-school activities very seriously. A number of students have told me that they want to stay at school until 6.00 pm as they have always done. Therefore, I would like to ask you to think again about this sudden change in policy. 

 

で、この内容を受けて、校長が次のように返信します。 

To: K. Roberts 

From: P. E. Berger 

Dear Ken, 

Many thanks for your kind post. You've expressed some important concerns, especially about the energy costs and student opinions on school activities. 

The new policy has nothing to do with saving energy. The decision was made based on a 2019 police report. The report showed that our city has become less safe due to a 5% increase in serious crimes. I would like to protect our students, so I would like them to return home before it gets dark. 

Yours, 

Dr P. E. Berger 

Head Teacher

 

さて、皆さんはこの文章どう思いました?

 

まずは、問題文からイギリスの学校が舞台、ということで、イギリス英語が入っています。

 

イギリス英語で校長はhead teacherで、アメリカ英語はprincipalです。

 

イギリス英語のrealiseはアメリカ英語ではrealizeです。

 

現行の検定教科書や問題集は基本的にアメリカ英語にそっていることがほとんど思われます。

 

さまざまな英語に触れていないと、少し戸惑うかもしれません。

 

また、掲示板の投稿を読ませるというのも、一般的な教育現場ではあまりないと思われます。

 

このような文章を読ませたい、書かせたいとなったら、

 

ネットが必要になってくると思われます。

 

しかし、まだ、学校現場ではネットの環境が不十分だと思います。

 

今後も、ネット環境整備が追いつかなければ、対策問題演習のような授業、少なくとも文科省が求めていないような授業が多く行われていってしまう気がします。

 

 

2. 作問者がこめた英語教育への願いは何かという話。

 

で、最初の設問です。

問1 Ken thinks the new policy ( )

 

(1) can make students study more 

(2) may improve school safety 

(3) should be introduced immediately 

(4) will reduce after-school activity time 

Kenはthe new policyについてどう考えているかを把握する問題です。

 

つまり、Kenという書き手の意見をきちんと把握しているか問う問題といえます。

 

普段の授業でも、何かについて意見する・考えさせる、ということが求められると思います。

 

授業でこの文章を扱うとしたら、次のような発問は使えると思います。

 

What does Ken think about the new policy?

Why does Ken think the new policy will reduce after-school activity time?

What do you think about the new policy?

 

 

次の設問ですが、factが大文字下線にもとからなっています。

問2 One fact stated in Ken's forum post is that ( )

 

(1) more discussion is needed about the policy 

(2) the Head Teacher's experience is improving the school 

(3) the school should think about students' activities 

(4) there are students who do not welcome the new policy 

 情報を事実と意見に区別できるかを問う問題です。

 

情報を事実と意見に区別することは、ライティングをする上で基本的な能力と考えられています。

 

そういう意味で、普段の授業でも、何かについて書かせるとき、事実と意見を区別させながら文章を書く、ということが求められてると思います。

 

ちなみにこの問題答えは(4)ですが、「さすが!」と思うのは、答えの根拠となる問題文は次のようになっているからです。

 

A number of students have told me that they want to stay at school until 6.00 pm as they have always done.

 

ここでつられて選択肢をthere are many students who do not welcome the new policyとしないところがポイントです。

 

manyかどうかは主観的な要素なので、事実を選ばせる問題の答えとしては

 

微妙になってくるからです。「歓迎しない生徒がいる」なら事実だが、

 

「歓迎しない生徒がたくさんいる」は意見になりうるからです。

 

 

3. 英語のセンター試験と共通テストの違い

 

 はっきりいって、だいぶ変わったなという印象ではないでしょうか。

 

これまで、センター試験の対策は共通テストに比べてよくわからないものもありました。

 

発音問題や、文法問題、語句整序問題です。

 

これは、スピーキングやライティングを問う問題がないので、それを間接的にでも

 

測ろうという意図は少しでもあるかと思います。

 

しかし、今回はリーディングだけです。

 

どうなるかと思いきや、めちゃ良くないか?というのが現場にたつ教師の感想です。

 

分析すればするほど、現場ではこういう授業をするばよいのではないか

 

というアイディアが沸くような問題と思います。

 

これまでは、学習指導要領の文章で、求められる学力やそれを育てる授業を

 

仮に考えてやってきましたが、ゴールが見えた感じです。

 

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

この記事を読んで、少しでも参考になった方、

 

よければブックマークやいいね(スター)をお願いします!

 

 

共通テスト問題研究 英語 (2021年版共通テスト赤本シリーズ)

共通テスト問題研究 英語 (2021年版共通テスト赤本シリーズ)

  • 発売日: 2020/04/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

「意見だの事実だの、そういう問題です。」2021年度 大学入学共通テスト英語リーディング(第1日程)第2問Aのレビュー

2021年共通テスト英語リーディング(第1日程)第2問Aのレビューです。

 

100点満点のテストで、第2問Aは10点分の問題になります。

 

全部で5問、各問2点になります。

 

 

 

まず、問題は次のような前置きで始まっています。

As the student in charge of a UK school festival band competition, you are examining all of the scores and the comments from three judges to understand and explain the rankings. 

この前置きで、場面と目的がわかります。どうやら、イギリスの学校が舞台のようです。この文章の下に、各採点者のスコア表が載っていますが、今回は省略します。

 

 スコア表の次に各採点者のコメントが続きます。

 

Mr Hobbs 

   Silent Hill are great performers and they really seemed connected with the audience. Mountain Pear's singing was great. I loved Green Forest's original song. It was amazing! 

どうでもいいですが、舞台がイギリスなので、Mrとなっていますね。Mr.はアメリカ英語によく見られます。さらにどうでもいいことですが、今回各バンド名が、県名になっているとネット界隈では話題。Silent Hillは静岡、Mountain Pearは山梨、Green Forestは青森、Thousand Antsは今回登場していませんが、千葉?のようです。

 

 

Ms Leigh 

   Silent Hill gave a great performance. It was incredible how the audience responded to their music. I really think that Silent Hill will become popular! Mountain Pear have great voices, but they were not exciting on stage. Green Forest performed a fantastic new song, but I think they need to practice more. 

Ms.Leighはbutがところどころあるので、少し批判的な意見を言っているのがわかると思います。これはこの後の問いに関わってきます。

 

 

Ms Wells
   Green Forest have a new song. I loved it! I think it could be a big hit!

Ms Wellsはコメント少なすぎね。しかも、感想で終わっているこの感じ。Green Forestの曲の何がいいのかもよくわからない。

 

 

 

で、3人のコメントの後に、トータルでどういう評価が下されたのかの説明が続きます。

Judges' shared evaluation (summarised by Mr Hobbs)
   Each band's total score is the same, but each band is very different. Ms Leigh and I agreed that performance is the most important quality for a band. Ms Wells also agreed. Therefore, first place is easily determined.
   To decide between second and third places, Ms Wells suggested that song originality should be more important than good singing. Ms Leigh and I agreed on this opinion.

パラグラフが2つですので、各段落の概要を把握しておくことが大事なのかなと思います。

 

それで、各問いなのですが、問2、問3、問4はこうなっています。

 

問2

Which judge gave both positive and critical comments?

(1) Mr Hobbs
(2) Ms Leigh
(3) Ms Wells
(4) None of them

positiveとcriticalなコメント両方をしているのは誰か、という問題。

これはおそらく、意見の要点が掴めるかを試しているのでしょう。

 

なんにしてもそうですが、相手の何かに対する意見が、良い評価なのか、悪い評価なのか、さっと理解することは普段からやっていると思います。それを英語でやってもらう。そういう問題のようです。

 

 

 

問3

One fact from the judges' individual comments is that
(1) all the judges praised Green Forest's song
(2) Green Forest need to practice more
(3) Mountain Pear can sing very well
(4) Silent Hill have a promising future

さて、この問題です。次の問4もそうですが、

今回の共通テストで、一つ話題を取り上げるとしたら、fact and opinion問題になると思います。この問題の、良いと思った点、良くないと思っている点ですが・・・

 

良いと思った点

事実なのか意見なのか考えることを普段の学習でもすることになる。ライティングでは、事実と意見を意識して書いていくことになります。思考力が問われる問題といえそうです。

 

良くないと思っている点

慣れている人は選択肢を読むだけで解答がわかってしまうというのが、最大の欠点。factの選択肢を複数作ることは考えなかったのだろうか。

 

 

とはいえ、問題作成者側の立場からするとfactの選択肢を作るのはかなり苦労したのではないかと思います。正解は(1)です。allやpraisedが使われていることから、事実であると判断できるのではないかと思われます。

 

この問題のミソは選択肢の(2)も(3)も(4)も、問題文中では確かにそれに近い内容が述べられていて、言い換えられているというところです。ただし、これらは全てOpinion。だから不正解。

 

ところで、共通テスト前のセンター試験では、こうした言い換えが答えになるというのが基本的な考え方でした。ところが、今回、問4でその黄金ルールが崩されます。

 

問4

One opinion from the judges' comments and shared evaluation is that
(1) each evaluated band received the same total score
(2) Ms Wells' suggestion about originality was agreed on
(3) Silent Hill really connected with the audience
(4) the judges' comments determined the rankings

問3とは異なり、今度はopinionを選ぶ問題。

(1)も(2)も(4)も慣れていればfactだと一瞬でわかってしまう問題です。

ところが、真面目に本文を読んでいると、(2)が正解に見えてしまうのです。

そう、(2)は言い換えているけども、不正解。なぜなら、事実だからです。

 

言い換えがされていない、(3)が正解になっています。下に正解の根拠になる引用をもう一度置いておきます。 

Mr Hobbs 

   Silent Hill are great performers and they really seemed connected with the audience.

 

 

自分の作った定期試験問題に、似ている・・・

次の問題は、私が作った高3の前期中間試験問題です。

(1)〜(5)まで本のレビューがあって、それぞれについて、肯定的なのか、否定的なのかを読み取らせる問題です。

 

 

f:id:sunday5314:20210131184727p:plain

問題の一部

共通テストの第二問Aの問2で問われている、positiveとcriticalのコメント両方をしている人は誰かを選ばせる問題がありましたが、この定期試験の問題と考え方が非常に似ているなと思っていました。

 

 

 

まとめ

意見を理解する、それもざっくりと要点を理解するということが要するに大事ですよと言っているような今回の共通テスト第二問Aという感じでした。

 

問題文に出てくる単語も8割以上は基本的な単語ですし、資料をいくつも参照する必要があるのは面倒ですが、語数も第二問ではそこまで多くありません。

 

中学生や高校生でも十分解答できる問題という感じです。

 

ただし、fact and opinion問題が、今後現場でどう受け止められて、指導されていってしまうのか、そこが今後の課題となりそうです。

 

正直、事実なのか意見なのかを読解の練習として取り入れるのは、現時点ではあまりいい案ではない気がします。

 

それよりも、遠回りかもしれないが、読んで理解した文章をもとに意見文を書かせたりする方が指導内容としては充実するのではないかと思っています。

 

 

共通テスト問題研究 英語 (2021年版共通テスト赤本シリーズ)

共通テスト問題研究 英語 (2021年版共通テスト赤本シリーズ)

  • 発売日: 2020/04/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)