エレファントの英語教育実践道

私の英語教育と,これからの英語教育について。

英語の勉強をする全ての人にお勧めする『外国語学習の科学ー第二言語習得論とは何か』がためになりすぎてヤバい

 

 タイトル通り、現場にたつ先生はもちろん、

 

新書ということもあり高校生も理解できる内容なのに、

 

大学などで、教科書としても使われているというすごい本です。

 

 

年齢が学習の成否を決めるのか、年齢が学習環境を決めるのか

 

ニューヨーク市立大学の2003年の研究は次のようなものでした。

中国・台湾からアメリカに渡った10人の中国語母語話者の英語習得を3年間にわたって追跡調査しました。到着時の年齢は、一番下が5歳、一番上が16歳で、その年齢によって、学習行動や学習成果にどういう違いがでるかを調べたのです。

すると次のような結果になりました。

まず、英語と中国語、どちらの言語で話すのを好むかという質問に対して、到着後3か月ではすべての子が中国語と答えていたのに、12か月後では、一番移住年齢が若い(5~6歳)子はすべて英語を好むようになり、移住年齢が遅い(12~16歳)子はすべて中国語、中間の9歳に移住した2人は、両方の言語とも同じと答えています。(下線はブログ主によるもの)

ということは、やっぱり年齢がすべてじゃないか!と考えるのは、はやくて、

これだけ見ると、年齢がすべてを決めているようですが、そうとばかりも言えません。というのは、年齢によって、大きく「行動パターン」が異なるからです。

ということでした。つまり、小学校入学前のような年齢の子だと、英語を話す友達も比較的多く、同年代のアメリカ人の子どもが好きなテレビや趣味などがあって話す機会が多くあるのに対し、12歳以降のような子になると、趣味がアメリカ移住前の中国の時と変わらなかったり、中国語のニュースを見ることが多かったりということのようです。

 

たしかに、若ければ若いほど、そういった異文化に対する受け止めかたに柔軟だったりしますね。かくいう私も20歳を過ぎてからアメリカに留学していますが、最初のうちは日本語を話したり聞いたりすると、とても落ち着くので、すこし怠けてしまいました。溶け込むのがはやければ早い人ほど、英語の習得もはやいのは実感としても正しいものと思います。

年齢が到達度を決めているのか、年齢が環境を決め、それが到達度を決めているのかはっきりわからないのが実情です。

 

母語を習得することにより、外国語習得が難しくなる

 

ワシントン大学のパトリシア・クールらの研究が紹介されている。

パトリシア・クールについては、この動画を見ると研究のだいたいの内容もわかるのでお勧めです。

youtu.be

 

本文中で、「そうなのか!」と思ったことを引用します。

乳幼児は、世界の言語に存在するすべての音を区別することができます。たとえば、日本人の赤ちゃんは、生後数か月は l と r の区別ができますが、その能力は生後6か月から1歳くらいまでの間に急速に低下してしまいます。これは母語である日本語において区別されていない音の区別を無視することを学習してしまうからです。(下線はブログ主)

 

 

効果的な外国語学習法

 

本書で紹介されていた中で、賛成できるものを理由とともに紹介。

・分野を絞ってインプットする

 これはおすすめです。特に「英語ってなにを勉強したらいいですか?」っていう人にお勧めです。そもそも、英語の勉強は継続が肝心。そのためには、続けられるものでなくてはならない。自分の好きなもの、興味関心が続くものを選ぶこと。単語だけやる、とかでもいいと思います。最初は。続けていればだんだん風呂敷をひろげたくなるはずです。

 

・単語は文脈の中で覚える

 単語の暗記というのは苦手な人が多いようです。「すぐに忘れてしまう」という嘆きを何度も聞いています。そういう人は、丸暗記をした後に、文脈の中で触れておくことをしたほうがいいと思います。文章の中で、丸暗記をした単語がでてくる、意味を思い出す。そういった訓練をする必要があります。それができないと、覚えた意味、ないしね。

 

 

『英語学習 7つの誤解』を読み返して、そういえばこれは常識として知っておいたほうがいいのではないかと思った

 

 

 それなりに古い本です。それでも、この本のいくつかを

 

保護者や生徒に読むことをおすすめしたい。

 

その中の1つにある、「英語学習は早く始めるとよい」という誤解について。

 

第5話 早期英語教育は効果的か

 

電車の中吊りなどいろんなメディアの広告で、「英語学習は早いうちから」とか、

 

ネットの記事には「英語学習には臨界期がある!?」などの見出しが目立ちます。

 

臨界期というのは、簡単に言えば、何歳までに言語を学習しないと

 

習得が不可能になるというものです。ちなみに、これ、仮説です。

 

臨界期仮説といいます。

 

人は「研究の結果」や、~理論、~の権威が言った、などと書かれると

 

内容を精査せずに鵜呑みにしてしまいがちと思います。

 

国語学習の臨界期仮説について、わかっていることはあまり多くありません。

 

著者は次のように語ります。

 

外国語環境での英語学習の場合も(母語第二言語と同様に)倫理的な理由から、きちんと統制された実験はできないので、勢い、結果の解釈がさほどはっきりしない調査や逸話の類が多くなります。つまり、英語学習に臨界期があるかどうか、科学的に実証されてはいないのです。

 

まあ、そうであるなら、なおさら、はやく学習しておくのがよいのではないか

 

考える人もでてくるかと思います。

 

ここから先は、新書を読んで、ということにしたいと思いますが、

 

結論だけいうと、焦らなくてもよいのでは?と思います。

 

現場で中学生・高校生を教えている感覚からいって、

 

小さい頃の英語学習の経験と、中高の英語の成績はそんなにダイレクト

 

ではない気がします。むしろ、ちゃんと説明が聞けるとか、

 

日本語がきちんとしているとか、そっちのほうが大事じゃないかと。

 

ただし、小学校の英語教育が始まった時、彼らが中学生になって

 

小学校英語の効果を感じたのは、音に慣れていること

 

英語の表現(挨拶、身の回りの単語、I want to~, I can~など)を知っていることでした。

 

個人的なメモ

1.「英語は早く始めよう!」系の広告を見かけたら、どんな教育内容なのか中身を

 

みてみたい。

 

2.臨界期仮説の研究は2021年も発展しているのか、知りたい。

 

3.学校教育における小学校英語の導入は、臨界期仮説が根拠ではなかったと記憶しているが、どこかに記述あったっけなあ。