「ぶんけいってなんですか」と英語の授業でもないときに聞かれると、ぴんとこなかったりします。そんな話。
過去にどうなっていたかの話
昭和22年の学習指導要領から、今までの学習指導要領までを遡り、文型という用語がいつごろ使われ始め、どのように使われきたのかを探りました。
まず、平成15年施行の高等学校学習指導要領で 新科目「オーラル・コミュニケーション」の言語活動の取扱いの中で、次のような記述を発見。
コミュニケーション活動に必要となる基本的な文型や文法事項などを理解し,実際に活用すること。
過去の学習指導要領でも、「文型」と言う用語は使われてきました。
しかし、それは指導内容を分類するためのものと言う感じです。
したがって、このように指導上の取扱いについて言及しているのはこれが初めてになるかと思われます。
平成19年施行の学習指導要領でもほぼ同じような記述になっています。
ところが、平成21年告示の学習指導要領から「コミュニケーション英語」に変わり、文型という用語がいっさい見られなくなりました。
https://erid.nier.go.jp/files/COFS/h20h/chap2-8.htm
また、文型という言葉は、人によってどうやらさまざまなものをさすようです。
文型を、いわゆる5文型のこととして使う
文型を、文構造や構文として使う
この2つが今まで主流だったのではないでしょうか。
で、安藤(2008)は次のように説明しています。
一般に、”文型”(sentence type)と言うとき、二つの種類がある。一つは、Onions(1904)に始まり、細江逸紀博士の著作によって、広くこの国の学習文法に浸透していったと考えられる5文型と、もう一つはPalmer(1938)が唱導し、Hornby(1975)は発展させた動詞型(verb pattern)である。
英語の文型 ― 文型がわかれば、英語がわかる ― (開拓社 言語・文化選書)
現在はどうなっているかの話
中島(2017)では
5文型はどのような教科書でも参考書でも取り上げられているので、高校生ならば誰もがよく知っています。
とのことですが、第1文型やら第2文型やらというように、それぞれの文を「第何文型」で分類するようなものは学校現場ではあまり見なくなったように思います。
教科書によっては、SVCの文、SVOの文、SVOOの文、SVOCの文というように、5文型を扱っているものがほとんどではと思います。
あと、主語(S)はどれ? 動詞(V)はどれ?なんていう質問はしたりすると思いますが、「これは何文型?」と生徒に聞くように文型を教えていると、どんな時に役立つんでしょうか。
教員はすっかり教えた気にはなるので「便利」でしょうね。
生徒的には、その文が第4文型であっちが第5文型で、結局なんなの?という感じでしょうか。
これからはどうなるかの話
「この文は第何文型?」という質問は意味がないような気がしますが、
特定の指導法を否定する気は、このブログにはないので、どんな場面なら使えそうかを考えてみます。
1. 複雑な構造をしている、話題を理解するのにも重要な文を取り上げる際に使う。
複雑な構造の文を図式化して、学習者がわかりやすくなる。
2. 第1文型から第5文型まで、主語と動詞が必ず存在している事実を指摘し、(主に)ライティングでのフィードバックに生かす。また、日本語の語順との違いを認識させる。
3. 動詞の意味が文型を決定するため、その動詞がどんな文型をとるのか、どんな修飾語を伴うのが多いのか、語彙学習時などに役立てる。
4. 説明が理屈っぽいので、そういうのが好きな生徒にはいいかも。
5. より複雑な説明がわかる高校生や大人など、学び直しのような時に説明するときに使う。